一日は二十四時間しかなく,世界の競争は厳しく,少しでも時間があれば,もっとほかにやるべき事柄がある   『平成雑記帳 第177回』 高村薫 AERA 2011.2.14

雑誌記事の紹介.高村薫のこの連載には,毎回,背筋を伸ばさずにはいられない.ちかごろまれな,硬派の批評である.

今週の表題は,

「疎い」と言った首相.ニヤついてはいけない.
私たちも弛緩している.一日は二十四時間しかない.

である.アメリカの民間格付け会社が,日本国債の格付けを下げたことについて,管首相が「そういうのは疎いので」とコメントして批判を浴びている.そのことに対する批評である.首相だけでなく,政治家はもとより,国民全員がたるんでる!というのが氏の主張.

いまや寸暇を惜しんでブログやツイッターに書き込みをし,携帯電話でソーシャルネットワークゲームに興じる私たち大人の多くが,緊張感をもった人生とはほど遠い人生を生きているように見える.(略)...(こうしたことが)生活のほかの要素−人と話す,本を読む,スポーツをする,歩く,考える,観察する,などなど−と比べて突出した効能や必然性をもっているわけではない.

ゲーム大国のアメリカでも日本でも,仕事や研究や勉学に全力を傾けて生きている人間は,たぶん,携帯ゲームで時間を潰すようなことはしていないのではないか.一日は二十四時間しかなく,世界の競争は厳しく,少しでも時間があれば,もっとほかにやるべき事柄があるだろうからだ.

至極真っ当な指摘であるが,こういうことをきちんと言う人が少なくなってきた.