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“いつの時代も、てらいのないまっすぐな理想と抱えきれぬほどの自負、現状のまっこう否定は、若き後継者たちの特権なのである” 『君は隅田川に消えたのか 藤牧義夫と版画の虚実』 駒村吉重 講談社

君は隅田川に消えたのか -藤牧義夫と版画の虚実

君は隅田川に消えたのか -藤牧義夫と版画の虚実

それほど期待して買ったわけではなかった.帯に洲之内徹の名前がなければ手に取らなかったかもしれない.良質のミステリを読むようなノンフィクション.松本清張の小説に出てくるような,美術界の暗闇をあぶりだすような物語.だが,真に優れた美術作品とそれらを愛する人たちの物語でもあり,読後感はさわやか.戦前,戦後の美術史としても読める.文章も手慣れていて良い.この古風な名前を持つ著者のものを読むのは初めてだが,数々のノンフィクション賞を受賞している.1968年生まれ.
帯から

ミステリーは、
夜にはじまった

美術評論家・洲之内徹が絶賛した藤牧義夫
その消息はいまでも不明で、作品にはさらに大きな謎が残る
藤牧生誕百年、絵巻と版画に秘められた怪事を追う

いつの時代も、てらいのないまっすぐな理想と抱えきれぬほどの自負、現状のまっこう否定は、若き後継者たちの特権なのである。

藤牧が関わった,宗教法人国柱会

宮澤賢治高山樗牛、創作版画の先達だった山本鼎らが会員だったことはよく知られているが、とりわけ国柱会の名を知らしめたのは、帝国陸軍のエリート将校で、満州事変の青写真を描いて自らの実践の指揮をとった石原莞爾であろう。

紫綬褒章も受章した版画界の重鎮,小野忠重の藤牧義夫像に疑問を投げかけたのは,洲之内徹であった.
藤牧版画の発掘者であると同時に,『一寸』誌上で自らの調査,分析結果を公表した大谷芳久氏の発言.

「ひどいできだろう…。これだけは絶対に(美術館への納入を)阻止しなきゃならんかった。こんなもんが認められたら、あれもこれも、ぜんぶ藤牧版画になってしまうだろう。へんなもんでさ、こういうタイミングではかったように、あっちこっちから“新作”が見つかったりするんだ。そういう例が、いくつもあるのさ。そのうちには、贋作のほうがでかい顔をするようになっちゃうんだね。

【関連読書日誌】

  • (URL)真正直な人間を騙すのは不可能だ。詐欺師の詐欺を可能にしているのは、気の毒な被害者がもつ強欲と、留まることのない想像力と、また窮地から脱しようと夢見る希望なのだ” 『偽りの来歴 ─ 20世紀最大の絵画詐欺事件』 レニーソールズベリー, アリースジョ, 中山ゆかり訳 白水社

【読んだきっかけ】
書店にて
【一緒に手に取る本】

藤牧義夫 眞僞

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藤牧義夫―生誕100年

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洲之内徹の名を知ったのは何かがきっかけだった.思い出せない.洲之内のコレクションを所蔵している宮城県立美術館へは,それを見に2度ほど行った.
気まぐれ美術館 (新潮文庫)

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洲之内徹が盗んでも自分のものにしたかった絵

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