“なぜそのような複雑さを帯び、なぜわかりづらいのかを知ることによって、「そういうものなのだ」という、おそらく江戸期の庶民が皆抱いていたであろう納得は、我々の中にも深く落ちていく” 『浄瑠璃、大阪、新地の女』 私の読書日記 酒井順子 週刊文春 2012年9月20日号

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三谷幸喜の映画は,少なくとも我が家では,世評ほどの評価を得ていない.しかし,三谷幸喜が作・演出をてがけた文楽「其礼成心中」は観てみたかった.橋下市長が文楽の現代化を主張する中,どのように調理したのだろうか.さて,酒井の文章は,三谷版文楽の感想からはじまる.
それでも浄瑠璃は浄瑠璃で,上手な大夫さんの声に,眠気が増し,「好きなのに寝てしまう」.浄瑠璃は音楽ですからね.そこで,橋本治の『浄瑠璃を読もう』は,物語を読み解くための必読の書なのである.まさにそのとおりだと思う.
読み進むうちにわかってくるのは、浄瑠璃の意味ばかりではない。日本における芝居の意味、伝統芸能の意味、ひいては文学の意味までもが、浄瑠璃とそれを生んだ時代を解くうちに、透けてくるのだ。
人形浄瑠璃がなぜ、リアルタイムの演劇であることをやめ、伝統芸能と化したのか。近松門左衛門が「曾根崎心中」を書くことによって成立した世話物というジャンルは、なぜ時代物と比した時にマイナーとされるのか。「何となく、そんなものだろう」と思っていたことの理由が、明らかにされる。
さらに,大阪市長の「つまらない」「わからない」を受けて,
確かに文楽は、複雑すぎるストーリーがわかりにくい言葉で語られる芸能なのだ。
しかし、なぜそのような複雑さを帯び、なぜわかりづらいのかを知ることによって、「そういうものなのだ」という、おそらく江戸期の庶民が皆抱いていたであろう納得は、我々の中にも深く落ちていく。
私が文楽にはまった要因の一つが,その物語の複雑さにある.よほどちゃんと予習しておかないと,訳がわからなくなる.江戸期の庶民はよくついていけたものだと思う.
でも,吉本新喜劇をテレビでみながら,これも結構複雑な人間関係が構築されている.だんだんわけがわからなくなる.例えば,辻本茂雄が座長を務める『「茂造の秘密の結婚行進曲?!」』なんてそうだろう.文楽の伝統を継いでいるのではないかと思いたくなるのである.大きな違いは,首実検みたいな残酷なことは場面は出てこないということか.
【関連読書日誌】
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【読んだきっかけ】
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