“やはり人間は燃え尽きないために、どこかで正当に認知acknowledgeされ評価されappreciateされる必要があるのだ” 『災害がほんとうに襲った時――阪神淡路大震災50日間の記録』 中井久夫 みすず書房
- 作者: 中井久夫
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- 発売日: 2011/04/21
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二部構成の第一部は,東日本大震災のテレビをみつつ 2011年3月11日―3月28日
- 和歌山県の紀ノ川台風による洪水のとき.自衛艦が河口で待ち構えていて,流されてくる人を助けた話
- 被災者の傍らにいること.誰か余裕のある人が,安心の空気で包むこと
- 日本人は希望的観測に盲従する傾向が強いこと
- 原発について毎日新聞の記事と解説が,もっとも簡潔で明快であったこと.記事は,既知メッセージが8割,ニューメッセージが2割のとき,もっともよく伝わる
- 自殺は災害直後は少ないのが法則のようなものだ,との自殺学会会長の弁
- 日本人は「無名の人がえらいからもっているのだ」
P.23
私はひょっとしたら「フクシマ・フィフティズ」なるものは架空の存在であって、日本国内には不十分であろう現場の人にエールを送り、そしていざとなればチェルノブイリにような決死隊の編成を行うようにと示唆するために作られたのではないかと、気をまわした。
第二部 災害がほんとうに襲った時 付・私の日程表 1995年1月17日―3月2日
P.41
一つの問題を解決すれば、次の問題がみえてきた。「状況がすべてである」というドゴールの言葉どおりであった。彼らは旧陸軍の言葉でいう「独断専行」を行った。おそらく、「何ができるかを考えてそれをなせ」は災害時の一般原則である。
(中略)
指示を待ったものは何ごともなしえなかった。統制、調整、一元化を要求した者は現場の足を引っ張った。「何が必要か」と電話あるいはファックスで尋ねてくる偉い方々には答えようがなかった。今必要とされているものは、その人が到達するまでに解決されているかもしれない。そもそも問題が見えてくれば半分解決されたようなものである。
P.49
結局、日頃、仕事をとおして信頼関係にあるところが実質的な援助を与えてくれた。明石の精神科診療所長I氏の名言によれば「ほんとうに信頼できる人間には会う必要がない」のである。いや,細かく情報を交換したり、現状を伝えたりする必要さえなかったのである。
- 阪神電鉄はかねて「タイガースファン」に鍛られて,大量輸送のノウハウを持っていた.
- 「存在してくれること」「その場にいてくれること」が(一般)ボランティアの第一義
神戸のホームレスは市民との間に暗黙の交換がある。働かない者を排除する気風はない。かつてある盛り場の「ホームレスを取り締まれ」という投書に対して「そういう人がおられるのが街というものではないでしょうか」という市側の返事を新聞か広報で読んで感嘆したことがある。
- 総合病院に精神科のあることの大事さ.他診療科からの理解を得ること
- 突然避難民をあずかることになった校長先生と教員の精神衛生.校長先生たちはある意味ではもっとも孤立無援
やはり人間は燃え尽きないために、どこかで正当に認知acknowledgeされ評価されappreciateされる必要があるのだ。
エリアス・カネッティの『群衆と権力』によれば,人間集団はある限界を越えると突然「液状化」して「群衆」と化し,個人ではまったく考えられない掠奪、暴行、放火などを行うという。
- 神戸は,日本のとしては唯一中心部に,宗教建築群をもつ都市
- 中井久夫による(まぼろしの)昭和天皇論「昭和を送る」.これについては,調べてみると,斉藤環氏が触れている(URL).読んでみたい.
- 兵庫県の初代知事は伊藤博文
最後に,私の日程表とあとがき
- 「戦闘消耗」,40,50日しか過度の緊張は持たない.兵士は突然どうにでもなれという行動に出る.戦闘という無理を自己激励によって心身に強いてきたの限界に達して,雪の積もった竹が跳ね返るように,精神が正常化する事態
【関連読書日誌】
ドゴールつながりで,これをひいておきます.これも偶然.
- (URL)“今回の大災害は、これまで通用してきたほとんどの言説を無力化させた。それだけではない。そうした言葉を弄して世の中を煽ったり誑かしたりしてきた連中の本性を暴露させた。” 『津波と原発』 佐野眞一 講談社
【読んだきっかけ】
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- 作者: 中井 久夫
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